厚浜木材加工場
束長さと下弦材狙い位置をずらしてリズミカルで有機的な屋内空間を目指した。
多くのプロジェクトで協働してきた厚浜木材加工協同組合の加工場でもあり、加工職人の技術を現しにしつつ、協同組合のアイコンとして、構造エンジニアリングに「ちょっぴり」デザインアクセントを加味した。
外部方杖により登り梁下端の固定度を上げ、棟部で束材とHP(Hyperbolic Shell)シェル状にずらして配置した下弦材によりタイ・ビームを構成している。
構造架構をモジュール化してリズミカルな内外観を表しつつ、繰り返し作業は工期を短縮した。
登梁は2本の合わせ梁として1本梁と比べて梁せいを小さくし、方杖を合わせ梁の隙間にすっきり収めた。同時に、合わせ梁は倒れ留めを不要とし、小梁断面を最小化した。
棟部の下弦材は妻面で束長さを長くして菱形に、室中央では束長さを短くしてタイを水平に近づけた。
直線部材が少しずつねじれの配置とすることでHPシェル(Hyperbolic Shell)曲面を構成している。
各スパン梁の棟部束材下部はつなぎ材と筋交いで接続し、屋根荷重を均等化するとともに、大きな壁面となる妻面の面外耐風性能を向上させる方杖を兼ねる。
接合部は住宅に使用する既製金物あるいはシンプルな鋼板・ビス・ボルトのみを用いることとし、大断面集成材に使用するような接合金物の特注鉄骨工事を不要にした。柱脚のみ、シンプルな溶接による鋼板金物を使用した。
外周部方杖も少しずつ狙い点をずらし、内部空間の表現と合わせた。
HPシェルは有機的な曲面ながら、木材を曲げ加工することなく直材のみで構成できる「線織面」であり、曲面の優しい雰囲気・木の風合い・木造加工技術を魅せる。
構造デザインを駆使した空間は、これからの林業を担う学生等の見学者へのアイコンになれば期待する。